うつわ雑学

うつわ好きが愛してやまない備前焼の魅力

ssyouhei

 いらっしゃいませ!今日は私の好みでうつわを語っていきますよ~。

 みなさま備前焼は使っていますか?備前焼といえば岡山県備前市を中心に制作される日本の陶磁器。国内の陶磁器製産業の中でもトップクラスに歴史が長い六古窯の一角で、なんと平安時代にルーツを持ちます。約1000年…

 最大の特徴は釉薬を一切使わないこと。釉薬とは大半の陶磁器に使用されているガラス質コーティング。これにより気泡を塞いだり、彩色をしたりするのですが備前焼はそれをしないのです。使用されるのは炎と灰と土のみ。極限まで磨き抜かれた原始的な美しさが特徴的な陶磁器です

 私自身、色々なうつわを使っている方だと自負しておりますが、「今後一種類しかうつわを使えないと言われたら何を使う?」と聞かれたら私は迷うことなく備前焼を選びます。いや実用性・機能性・耐久性などなど加味すると備前焼ってマジで凄いんですよ。今回はそんな備前焼の魅力を語ってまいりましょう。

①自分だけのうつわになる。

「陶芸は炎と土の気まぐれの芸術。人が関与できるのは1割くらい。」以前お話させていただいた陶芸家がこのような話をされていましたが、備前焼はその最たる例だなと思います。備前焼には全く同じデザインのうつわは存在しません

備前焼は大まかに分けると5つのデザインが存在します。画像左上から順に胡麻、窯変(ようへん)、緋襷(ひだすき)、桟切り(牡丹餅とも)、青備前です。(よかった~全部持ってて。)

 これらはすべて炎とそれに焼かれた蒔、吹き上げられた灰…そういった物が焼成中にうつわに付着したり、重なったりしてできる模様なのです。そう、計算されていないんです。どんな模様になるかはある程度の経験で図れるようですが、濃淡や細部の出来は窯の機嫌次第。出来上がるうつわはすべて唯一無二なのです。お気に入りのうつわは他の誰の物でもない、あなただけの一品になるのです。

②料理や花に目が行きやすい。

 備前焼を使っていていつも思うことがあります。「主役を譲るのが上手いうつわだな…。」という点です。うつわだけで見ても美しく、使っても美しい。というのが理想のうつわなのですが、前者はともかく後者が特に厄介で、料理や花より目立ってしまい、結局使いにくい…うつわに拘り出した際、こんな覚えはありませんでしたか?備前焼はその点非常に優秀で、とにかく料理や花に目が行くんです。単体の見ごたえで選んでも、とにかくスッと目に入る。これほど仕事ができるうつわ、他に知りません。

③飲み物がまろやかになる。

 ワインを飲んでいる人がワイングラスをぐるぐるしているのを見たことありませんか?あれはスワリングといいまして、ワインを空気接触させることで酸素を取り入れる酸化状態にするのです。こうすると隠れていた香りや味わい、舌触りが現れて美味しく飲めるようになるのです。備前焼はこれと同じことができるのです。

 前述のとおり備前焼のうつわは釉薬と呼ばれるガラス質のコーティングを施しておりません。そのため表面は凹凸による気泡だらけなのですが、この気泡が液体に空気を入れる役割を担うのです。お茶やコーヒー、日本酒など舌触りが柔らかくなって美味しく飲めるんですよ。

 「思い込みなんじゃない?」って思われたかも知れませんが、現地でこの言葉を聞いて信用できなかった私が、水道水で数回にわたる時間経過観察までした上で書いてます。ちなみにこの気泡、ビールの泡立ちが大変よくなるのだとか。備前のビアグラス、カッコいいっすよ。

④丈夫で割れる気がしない。

備前焼の有名な話のひとつに「投げても割れぬ、備前鉢」という言葉があります。昔から備前焼の丈夫さを物語るいつわとして語り継がれているようですね。流石にこれは試す勇気が出ませんでしたが、丈夫という点に関しましては間違いなくトップレベルですね。これに関しては備前焼を焼き上げる温度が決め手だと思われます。

陶磁器は高温で焼けば焼くほど固くなるのです。市販のお茶碗は1000℃から1200℃。有田焼など磁器は1300℃で焼成されるのですが、備前焼は1400℃の高温で焼かれます。さらに備前特有の土には鉄分が豊富。これが超高温で全体に溶けて再凝固し、堅牢なうつわになるとも言われますね。

実生活でもこの丈夫さはいかんなく発揮されており、私は愛用の備前焼が10個あるのですが…そんな持ってたか!?ま、まあ10個持ってるのですが、これを全部週2~3ペースで3年以上使って、発生した不具合は端っこの欠けが一個発生したのみです。これは凄まじい耐久性です。

 当然割れたことは無し。むしろ冷茶を注いでいるときに不注意で落とした急須の蓋が、江戸切子を粉砕したくらいです。切子でも特に固いカガミクリスタル製だったんだよな…本当にごめん江戸切子…。

 ここまで聞いてどうでしょうか?これは流石にうつわとして最強を認めざるを得ないでしょう。最近の研究では豊富な鉄分を含む土を焼いたことで、遠赤外線効果を帯びているなんて研究結果も出始めたそうですよ!保温・保冷などの観点でも期待できますが、こちらは今のところ実感しきれてないので詳細は他所に譲ります。なんにせよ備前焼は大変魅力的なうつわです!うつわが好きな方はぜひひとつ使ってみてください!ほんと感動しますよ備前焼。

 ということで今回はここまで!ぜひ素敵なうつわライフを!

店主紹介
気楽なスタッフ
気楽なスタッフ
現役サラリーマン
現在20代後半。大学生の時に観たドキュメンタリーがきっかけでうつわに魅了された男。

「ひとりでも多くの人がうつわに込められたメッセージを楽しんでほしい!」をテーマに活動すべく、個性豊かな愛用のうつわに振り回されつつ生活をしている。

愛用のうつわは笠間焼、備前焼、九谷焼きなど日本陶磁器が中心。西洋磁器はウェッジウッド、マイセンがお気に入り。食空間コーディネーター3級を持っています。

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