陶磁器の流行の最先端 笠間焼
みなさんこのお皿はどこの産地のお皿だと思いますか?
こちらは笠間焼のお皿です。この色は笠間焼の伝統的な釉薬「柿渋釉」と呼ばれるもの。黒と茶色の重厚感がたまりません。
ではこちらはどうでしょう?
志野釉が使われた厚みのある白。志野釉については以前美濃焼編で少しお話いたしましたね。ということはこの湯呑も…?
そう、笠間焼ですね。こちらは笠間焼の陶芸作家、ランディ・ウージィ氏の作品です。
ならばこれらもどうでしょうか?そうです、笠間焼です。
いやいや振れ幅広すぎるだろ。ということで今回は笠間焼のお話です。
前回のお話しで少しふれたとおり、笠間焼は江戸時代後期ごろに誕生してから300年の歴史をもつ茨城県笠間市の陶芸産地。しかし近代に入るまで笠間焼は衰退の一途を辿っておりました。この現状を変えるべく70年ほど前に技術革新が起こります。笠間陶芸学校を開口し、技術者を積極的に招集したことにより個人の参入が容易になりました。伝統の衰退と個人の参入。窯元よりも個人による作陶が勢いを増し、作家性が強くなった笠間焼は作家の個性がひしめき合う産地となりました。
日本にはしばしば「個性がないのが個性」と言われる陶磁器産地があります。これは技法や作風が広い産地がよく言われるのですが、よく見ればその技法・作風は長きにわたって受け継がれてきた物。個性はちゃんとあるんです。
笠間焼もこの「個性がないのが個性」系の産地なのですが、笠間焼は本当に個性がないのが個性です。いえ、「個性が多すぎて逆に無個性」というべきでしょう。私が持っている笠間焼の作品だけでもこの幅の広さ。これでもやや使いにくい前衛作品を買うのは控えている方なので、実際の売り場はもっと刺激的です。
美濃焼の織部釉、備前焼の緋襷など他の産地の技法を積極的に取り入れる作家さんもいれば、アーティスティックで前衛的な作品を手掛ける方もいたり、使いやすい日常雑器を作られる方もいる。私は産地ではなく創作陶芸集団として笠間焼を見ています。とにかく見ていて飽きない、刺激的で楽しい産地です。
これに加えて笠間焼はとにかく変化が大きい産地です。作風が自由な個人作家が多い産地ということもあり、様々な作家さんが様々な作風や技法を試行錯誤しております。この結果作風が常に動き続けるという陶芸産地においては前代未聞の特徴を持っているのです。個人の感覚では四半期に一度顔を出さないと流行に置いて行かれてしまいます。
ただ個人作家作品の多い産地ということもあり、他の産地にはないデメリットもあります。まず平均価格は全国の陶芸産地の中でもやや高めではあります。というのも個人作家は名前を売るアーティスト気質の陶芸家です。原料も色々とこだわることも多いため、価格は窯元作品に比べると少々割高になります。正直「高い」と感じないくらい良い買い物ができるのであまり気になりませんけどね。
どちらかというとふたつ目のデメリット、気に入ったうつわをもう一度買いにくいというほうが致命的でしょう。作風の移り変わりが激しいということは同じ作品が出回りにくいということ。半年前まで自然釉による鮮やかな緑のうつわを作っていた方が、今では黒中心のうつわばかり作っていたというケースがありました。うつわの買い物は基本的に一期一会ですが、笠間での買い物はこれがかなり顕著なので要注意です!!
300年の歴史を持ちながら自由奔放な作風を誇る笠間焼。伝統的なうつわに触れば触れるほど、多くの驚きと発見があるとても魅力的な産地です。来月10月は陶器市シーズン。全国各地の陶器生産地で陶器市が開催されます!笠間焼も陶炎祭という大規模な陶器市が開催されます。まだ行ったことがない方、これを機にぜひ訪れてみてはいかがでしょうか!
今回はここまで!それでは~。