思い入れのある茄子の花
いらっしゃいませ。
本日はあるお花を生けることになりました。
それがこちら。茄子の花です。
先日実家に帰った際、家庭菜園の茄子が凄まじい勢いで伸びていました。10月も半ばだというのに花まで咲いてまして。せっかくなのでひとつ拝借した次第です。ちなみに花器は備前緋襷。小西陶古さんの作品です。
スーパーではおなじみの食材、茄子。年間を通して安定出荷される食材ですが、シーズンの茄子は肉厚で非常に食べ応えがございます。しかしながら結実前は中々味のある花を咲かせます。
私にとって茄子の花は少々思い入れのある花です。というのもこの茄子の花をきっかけに私は花生けに興味を持ったのです。
ある日、日本文化系の雑誌をパラパラめくっていた私はある特集ページに目が留まりました。ある旅館の床の間の花生けを題材にした特集だったのですが、そこで生けられていた花が茄子とトマトの花でした。
当時花生けに詳しくなかった(今もですけどね)私でも、一度見たら忘れられない衝撃を受けました。生け花で使う花と言えば観賞用の花が多い印象で、食用と言いますか少なくとも観る以外に用途のある植物を使うというのが衝撃的でした。
何より衝撃的だったのが、その茄子とトマトを受け止めていた花器。なんとトマト缶でした。海外のヴィンテージ品と思わしき代物でしたが、根本的には廃品です。非鑑賞用の花と廃品。それらが床の間に鎮座していたのです。言葉だけ聞けばチグハグな組み合わせ。しかしそこにたたずむ姿は廃材のようなみずぼらしさなど無く、むしろ威厳を放って見えたほどです。
アレは衝撃的な出会いでしたねぇ。それまで高貴で敷居の高いものという印象だった生け花が、もっと自由なものとして私の目の前に現れたのです。それと同時に奥深さと果てのない高さの片鱗を味わったものです。トマト缶に生け花としての美を見出すあの感性。いったい何を食べていたら思いつくのでしょう。トマトでしょうか?私トマトあまり得意ではないですし。
とまあ、茄子の花は私にとって花生けに興味を持つきっかけをくれた恩人のような存在なのです。季節外れではありますが、思い入れのある花をこうして部屋に飾ることができたので大変うれしく思います。花は萎んでしまいましたが我ながらバシッと決まったのではないでしょうか?
…だというのに。翌日起きたら。
動いてるーーーーーーー!!
何なら花咲いてるけど下向いてるーーーー!!結実する気満々だこの子!!!
とはいえこれはこれでビシッと決まってますね。君が咲きたいように咲けばいいさ。
以上、茄子の花の思い出でした。今回はここまで。それでは~。