最近の機内食ってすごい。
いらっしゃいませ!
先日ある焼き物産地へ向かう途中、手違いで飛行機に乗り遅れてしまいました。やらかした~泣
次の便はエコノミークラスこそ満席でしたが、プレミアムクラスの席が空いていました。追加で1万円が発生してしまうのですが、エコノミーで行くなら次の便は翌日。選択の余地はございませんでした。人生初のハイクラスフライトは思わぬ理由で叶いました。
が、捨てる神もいれば拾う神もいるものです。うつわ好きとして見逃せぬ出会いがありました。それは機内食です。
前回の焼きそばに引き続き、二回連続でうつわ関係ないのでは?と思われるかもしれませんが、食文化とうつわ。加えて食空間は密接な関係にありますのであながち無関係でもないのですよ。前回の投稿はうつわと関係無いですけど。
私が最後に食べた機内食といえば5年以上も前の話。成田→カタール(カタール航空)とフランクフルト→カタールの2回だったと思うのですが、特段語るよう内容ではなかったかと記憶しています。トマトソースチキンとかは出ましたが、よくも悪くも「機内食はつなぎの腹ごしらえ」というのが私の考えでした。
しかし昨日食べた機内食は素晴らしいの一言に尽きました。自他ともに認める日本文化好きなので「ひいき目」はあるかもですが、それにしても日本の食文化を堪能するにふさわしい食事でした!今回はある陶磁器産地に至る前日譚。「機内食、めっちゃうまかった」というお話です。
という訳でさっそく参りましょう。今回利用したのはANAのプレミアムクラス便。昼頃のフライトだったので昼食が提供された機内食になります。
見てくださいよこの高級感。黒/青の箱に帯留めて。
ちなみに食空間学の観点からすると、蓋付きというのは開けるときのわくわく感を煽る効果があります。この時点で何が提供されたか一切わかりません。当時の私も期待度マックスでした。
プレミアムクラスにふさわしい振る舞いを…と考えつつも、はやる気持ちを抑えきれずいそいそと帯を外し、いざご対面!
うわあああああ、すげえ!和食だあああああ!!
カタール→成田(カタール航空)の時みたいに「心ばかりのうどん」じゃない!本物の和食です!!と言うか今更だけど炭水化物ばっかだなこの機内食。
とにかくまさかの彩りに私も大興奮!!それでは改めて今回のメニューを味の感想とともに振り返ってみましょう。
①さつま芋と枝豆の御飯(左上)
白米は日本人の魂ですが、炊き込みご飯ほど心を揺さぶる飯もございません。しかもこれ、ちゃんともち米です。おこわです。もち米とさつま芋が大好きなスタッフにとって、こんなもの優勝確定です。負ける気がしません。
加えて、冷えていてもちゃんと美味い。土鍋ユーザーなので分かりますが、冷えて美味いご飯は高温で一気に炊き上げる炊き方をしています。妥協していない証です。「普通の炊飯器を使っている人間は妥協しているとでも言いたいのかい!!」と思われた貴方、大変申し訳ございません。ですがその通りです。一度全力でご飯を炊いてください。あの米という食材、あの値段で買える事実が恐ろしくなりますから。
②カレー豆腐ちくわ、ごぼう旨煮、かつおとくるみの佃煮、里芋肉味噌(中上)
第二ブロックはなんと4者が一同に会する激戦区。カレーなど外国人にもなじみ深い味が登場するのは国際的用途もある機内食ならではでしょうか。味は思いっきり日本カレーでしたけどね。つまりは最強ってことです。
個人的には里芋肉味噌が一番おいしかったですね。シンプルながら出汁が沁みていて存在感はカレーにも負けていませんでした。
③タラとチーズボール、タブナード添え(右上)
完全に和食ではなくなりましたね。誰ですかタブナードって。
※タブナード:オリーブの実をペースト状にした薬味。美食の地・南フランス発祥。
あまりにも未知すぎて私が真っ先に口にした食べ物です。味付けは至ってシンプル。タラとチーズの味を生かした揚げ物。四捨五入でコロッケなのですが、ここにタブナードの程よい酸味と塩味が良いアクセントになっております。両極端な味わいが実に楽しい料理でした。
④チキンのロースト クルミバルサミコソース(左下)
ついにイタリアも参戦です。しかも、この中でこいつが一番美味しかったです。特にこの下に敷いてあった、さつま芋ポテトサラダとバルサミコソースが絡んだ部分。ダークホースすぎる。
普段バルサミコソースは使わない人間なのですが、改めて口にすると美味しいですねこれ!!私は兼ねがね「和食とイタリアンは似た性質を持っている!!」と提唱しているのですが、今回の食事でより強固な説になりましたね。シンプルな鶏肉の味わいにバルサミコソースがまぁ~良く合うこと!!今度カルディで買ってきてやろうか、バルサミコソース。ちょっと真似できそうな発見があるのも楽しかったですね。
⑤白菜しらすゆず風味煮(中下)
出汁feat.柚子。この味わいを口にする度に私はどこまで行っても日本人なのだなと実感します。良く味が沁みた芋餅風のお揚げまで入って、これはもう言うことなしです。この弁当の中で一番おいしかったです。一番なんて何個あってもいいですからね。その方が幸せになれますから。
③④と来てからこの正統派和食ですよ。順番で頂くと実に楽しいです。己だけでなく、味覚でも旅をすることになるとは。考えすぎですかね?そういう意図があるとしたら仕込んだANA様も、それに気が付いた私も天才ということになります。
⑥鮭伊達巻き寿司、めはり寿司、ガリ
満を持してSUSHIの登場です。衛生面やカルチャーショックに問題がなく、海外にもなじみ深く、日本でも歴史のあるロール系のチョイスなのが実に技あり。ちなみに「めはり寿司」は高菜でご飯を包んだ和歌山県の郷土料理とのこと。(農林水産省HPより)何気なく食べてましたが和歌山の料理だったんですね。高菜がいい塩梅です。
常々思いますが鮭という魚はなんでこう、何をしても美味いんでしょう。生でも良し、焼いて良し、炊いて良しと隙がありません。近年値上がりが顕著な点は残念ですが、まあ仕方ないですね。ガリまでついて本格的です。
⑦味噌汁
まさか味噌汁まで付いてくるとは…と思いましたが機内サービスでビーフスープとか出してましたね。イケるか。使い捨てのプラスチック製容器ながらちゃんと汁椀の形をしている点に拘りを感じます。
さすがにインスタントではありますが、そんなこと些事ですよ些事。暖か~い出汁と味噌。これをを感じられれば日本人幸せなんですから。そもそもインスタントより美味い味噌汁を自分は作れません。なんでこんなに美味しいんですかね、インスタント味噌汁。勝てる気がしません。
以上が今回のメニューになります。いや~大満足です!食べてる間は「美味しい」を連呼してましたもの。迷惑じゃなかったかな…
なにより飛行機のプレミアムクラスという特別感もこの美味っぷりを加速させていたのかもしれません。なにせ美味しいを構成する五感のうち、味覚の貢献率はたったの5%。雰囲気というのは実に大切です。
色々と感動した食事でしたが、なにより驚いたのがメニュー表の最後にあったカロリー表記。「※味噌汁除く」とのことですが(なぜ除いた?)、そこには信じがたい数値が書かれておりました。その驚くべき数値とは…
なんと驚異の580キロカロリーです。
ご飯2種、加えて揚げ物に肉ですよ?成人男性としては小食を自負していますが、家系ラーメンに白米をつけられる位には食べられます。そんな私でもそれなりの満足感に包まれた上でこのカロリーです。どうなってやがる。もちろん「※味噌汁は除く」ですので正確にはもう少し高いとは思うのですが、それでもここまで健康面まで考慮されているとは思わなんだ。
雲の上でこんな食事ができるとは思っていませんでした。出費はかなりの痛手でしたが、長時間移動でもなければプレミアムクラスなんて選択肢を選びませんからね。乗り遅れで焦った心もすっかり落ち着きました。やはり食事の力は偉大です。
以上、空の上の食レポでした。なかなか楽しい時間でした。ANA様、そして当メニューを考案してくださった和食料理長、ありがとうございました。今回はここまで。それでは~!
…「和食料理長」ってことは、他の料理もあるんですかね?